2014ボリショイ・バレエ『ラ・バヤデール』初日

ボリショイ・バレエの『ラ・バヤデール』初日を観た(12月3日 18:30/東京文化会館)。

≪ラ・バヤデール≫全3幕

原振付:マリウス・プティパ(1877年)
追加振付:ワフタング・チャブキアーニ、コンスタンチン・セルゲーエフ、
     ニコライ・ズプコフスキー
振付改訂:ユーリー・グリゴローヴィチ(2013年)
音楽:ルートヴィヒ・ミンクス
台本:マリウス・プティパ、セルゲイ・フデコフ
台本改訂:ユーリー・グリゴローヴィチ
舞台装置・衣装:ニコライ・シャロノフ
舞台装置・衣装顧問:ワレリー・レヴェンターリ
照明:ミハイル・ソコロフ
指揮:パーヴェル・クリニチェフ
管弦楽ボリショイ劇場管弦楽団


<出演>
ニキヤ(寺院の舞姫):スヴェトラーナ・ザハーロワ
ソロル(戦士、ニキヤの恋人):ウラディスラフ・ラントラートフ
ドゥグマンタ(藩主):アレクセイ・ロパレーヴィチ
ガムザッティ(ドゥグマンタの娘):マリーヤ・アレクサンドロワ
大僧正:アンドレイ・シトニコフ
トロラグワ(戦士):イワン・アレクセーエフ
奴隷:デニス・ロヂキン
マグダヴェヤ(托鉢僧):アントン・サーヴィチェフ
アイヤ(奴隷の娘):アンナ・バルコワ
ジャンペの踊り:ユリア・ルンキナ、スヴェトラーナ・パヴロワ
パ・ダクション:ダリーヤ・ボチコーワ、エリザヴェータ・クルテリョーワ、スヴェトラーナ・パヴロワ、マルガリータ・シュライネル、ネッリ・コバヒーゼ、オルガ・マルチェンコワ、ヤニーナ・パリエンコ、アナ・トゥラザシヴィリ、アルテミー・ベリャコフ、ドミトリー・エフレーモフ
太鼓の踊り:クリスティーナ・カラショーワ、ヴィタリー・ヴィクティミロフ、デニス・メドヴェージェフ
青銅の仏像:ミハイル・コーチャン
マヌー(壷の踊り):アンナ・レベツカヤ
精霊たち
第一ヴァリエーション:エリザヴェータ・クルテリョーワ
第二ヴァリエーション:アンナ・チホミロワ
第三ヴァリエーション:チナーラ・アリザーデ
子役:日本ジュニアバレヱ(指導:鈴木理奈)

久し振りに見る演目。席は4階左バルコニーの1列目。
第1幕。寺院の場。ザハロワは最初のソロを見るとやはり味が薄いと感じたが、その後、ソロルと密会するとき身体全体で喜びを表現し踊る。思わず頬が緩んだ。ソロルのウラディスラフ・ラントラートフは端正で癖がなくきれいな踊り。藩主ドゥグマンタの宮殿の場。ガムザッティのアレクサンドロワは少しウエストが太くなったが(特にザハロワと比べると)踊りは個性的で濃厚な味がある。そこに居るだけで〝気〟が発散され、存在感たっぷり。ここで女性たちが白い垂れ布を持って踊る「ジャンペの踊り」は好きなのだが、音楽から感取できるタメをさほど作らず踊っていた。その後、ニキヤが奴隷(デニス・ロヂキン)と踊る。当初はザハロワに似た別のダンサーかと思った。ニキヤとガムザッティのやり取りはやはり見応えがあった。アレクサンドロワはさほど気持ちを込めずゆったりとした様式的な動きでザハロワを突き飛ばす。すると、ザハロワはその強さ以上に「あれえ」という感じで勢いよく突き飛ばされる。「気持ち」を込めずとも「気持ち」が見えるようなあり方。面白い。オケについては、ここ東京文化会館では、オーチャードほど響きが(特に弦楽器群)よくない。が、フルートは『白鳥』同様、素晴らしい。
第2幕。宮殿の庭園。二人の婚約を祝う宴。ディヴェルティスマンでは、「太鼓の踊り」に拍手がもっとも大きかった。男の野性的な踊りに日本の(特に女性)観客は飢えているのか。「ブロンズの踊り」(ミハイル・コーチャン)はまあきれいだが、重量感や仏像が踊っている面白さはさほど感じられない。「壺の踊り」(アンナ・レベツカヤ)は日本の女の子二人と踊る。ガムザッティとソロルアダージョではアレクサンドロワの独壇場。体温の高そうな踊り。少し太めだからラントラートフは大変だが、なぜか見ていると笑顔になる。ソロルのヴァリエーションはまずまずか。ガムザッティのヴァリエーションは味わい深い。ハープとチェロのオブリガートが美しい。ザハロワも負けてはいない。ニキヤの恨み節で匂い立つようなチェロのソロに合わせて、美しい肢体を活かした動き。テンポが速くなった後半の花籠を持っての踊りは懐かしい。かつて新国立でザハロワはこの部分をまるで狂ったように踊っていた(特に初めの頃)。今回はそこまでではないが、やはり彼女のよさが出ていた。白鳥よりニキヤの方がよほど合っている。カーテンコールで、日本の子供たち(日本ジュニアバレヱ)が出てくると拍手が弱まる。なぜだ。そんなに日本人を見るのが嫌なのか。
第3幕。ソロルがベッドで阿片を吸う前後、苦行僧たちの「燈明の踊り」があった。新国立の牧版では「太鼓の踊り」同様カットされているので新鮮。幻影たちが山から下りてくる「陰の王国」のコール・ドはとても幻想的で美しい。ちょっとグッときた。アラベスクの脚上げがかなり高め。三人の女性の踊りも質が高い。このあとのアダージョは、白く長い布を使ったやつ。新国立でいつもザハロワが苦手そうに踊っていたのを想い出す(特に左右両回転)。今回は以前より改善されてはいたが、やはりちょっとぎこちない。でもOK。ソロルのヴァリエーションではきりもみ回転等、なかなかのもの。最後は幻のニキヤも消えていき、ソロルは崩れ倒れる。これで終わり。第4幕はカット。
ハープがダイナミックかつ音楽的で素晴らしい。ヴァイオリンのソロは音はよいが高音やハーモニクス等で少し不安定(『白鳥』とは別人か)。それでもオケの質が全般的に高く、指揮者のパーヴェル・クリニチェフも音楽的(当たり前だが)で音色(質)を大事に振っている感じ。個人的には『白鳥』を振ったパーヴェル・ソローキンの方により魅力を感じるが。