2014ボリショイ・バレエ『白鳥の湖』/久し振りに見たザハロワ

ボリショイ・バレエによる『白鳥の湖』東京公演の初日を観た(11月20日 19時/オーチャード・ホール)。
今回は配役がいろいろ変わった。以下は簡単なメモ。

白鳥の湖≫全2幕4場

振付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ、
   アレクサンドル・ゴールスキーユーリー・グリゴローヴィチ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
台本・演出:ユーリー・グリゴローヴィチ
美術:シモン・ヴィルサラーゼ
照明:ミハイル・ソロコフ
音楽監督・共同制作:パーヴェル・ソローキン
指揮:パーヴェル・ソローキン
管弦楽ボリショイ劇場管弦楽団
プティパ・イワノフ版初演:1895年1月15日、ペテルブルグ帝室マリインスキー劇場
グリゴローヴィチ新改訂版初演:2001年3月2日、モスクワ・ボリショイ劇場

<出演>
オデット/オディール:スヴェトラーナ・ザハーロワ
ジークフリート王子:デニス・ロヂキン
王妃(王子の母):クリスティーナ・カラショーワ
悪魔ロットバルト:アルテミー・ベリャコフ
王子の家庭教師:ヴィタリー・ビクティミロフ
道化:デニス・メドヴェージェフ
王子の友人たち:アンナ・ニクーリナ、クリスティーナ・クレトワ
儀典長:アレクサンドル・ファジェーチェフ
花嫁候補たち
ハンガリー:アンジェリーナ・カルポワ
ロシア:アンナ・レベツカヤ
スペイン:アンナ・チホミロワ
ナポリ:ダリア・コフロワ
ポーランド:マリーヤ・セメニャチェンコ
3羽の白鳥:アンジェリーナ・カルポワ、オルガ・マルチェンコワ、
      アナ・トゥラザシヴィリ
4羽の白鳥:ユリア・ルンキナ、アンナ・ヴォロンコワ、
      スヴェトラーナ・パヴロワ、マルガリータ・シュライネル
ワルツ:アンナ・レベツカヤ、ネッリ・コバヒーゼ、
    アナ・トゥラザシヴィリ、ヤニーナ・パリエンコ、
    ミハイル・クリュチコフ、イワン・アレクセーエフ、
    ドミトリー・エフレーモフ、クリム・エフィーモフ

グリゴローヴィチ版は変則的。第1幕。真ん中に垂れ下がるセットがうっとうしい。いきなり王子が出てきて踊る。その王子(デニス・ロヂキン)がきりっとしない。ダンサーの個性かそれとも版が要請した属性か。久し振りにザハロワ(ザハーロワ)を見た。相変わらず手脚は長いが、踊りから勢いが弱まったような印象。照明が暗い所為もあるが、眠気がとれない。全体的にあまり面白くないが、オケはよい。ヴァイオリンソロはゆったりと余裕の演奏で、チェロのソロは香り立つ。指揮者の鳴らし方はバランスが絶妙で、木管がよく聞こえる(席は2階正面5列右寄り)。東フィルがいつも外すホルンのフレーズもミスしない(ただ、音量は少し薄め)。オーボエは普通だがフルートは素晴らしい。道化は抑え気味。マイムがほとんどない。演劇的要素が乏しい。
第2幕のディヴェルティスマン。外連味よりも、踊りのよさを滲み出す方向。テンポは全般的にゆったりめ。かなりrit.がかかってフィニッシュする。ザハロワは黒鳥は悪くない。が、フェッテでも前より安定はしているが面白みは軽減した。つまり、角は取れたが、その分、以前の荒削りのなかの妙味や勢いは弱まった。踊りの形(ライン)は一見きれいになったのかも知れないが、中身が充実したかといえば、そうとも見えない。コントロールを重視しているのか。フォルマリズム。やはりオケは素晴らしい。ロットバルト(アルテミー・ベリャコフ)の力強さ。二幕のソロはとてもよい。ラストはロットバルトと白鳥が中央の、例のうっとうしい幕の後ろに隠れ、王子が独り残される。この音楽は序曲の後半部分? 予定調和でなく悲劇で終わる点はよい。だが、尻切れトンボの感は拭えない。全般的に物語の豊かさが感じられない。踊りはあるが、それが何を語っているのか。あるいは語らせようとしているのか。