NHKバレエの饗宴2014/興味深いプログラム

仕事に追われ、なかなかブログの更新ができない。遅まきながら簡単にメモする。
NHKが主催する「バレエの饗宴」を観た(3月29日17時/NHKホール/主催:NHK、NHKプロモーション/協賛: 三菱商事株式会社/協力:チャコット株式会社)。
三回目の今年は、ロマンティックバレエへのオマージュとも見えるバランシン「スコッチ・シンフォニー」と、オマージュの対象であるブルノンヴィル「ラ・シルフィード」(パ・ド・ドゥ)の取り合わせ。さらに、同じプロットレス・バレエでもバランシンとは異なる作風のショルツ「第七交響曲」。バッハの器楽曲(チェロと鍵盤)に振り付けたふたつのデュエット作。比較の妙を満喫できる大変興味深いプログラミング。

スターダンサーズ・バレエ団
「スコッチ・シンフォニー」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:メンデルスゾーン
演出・振付指導:ベン・ヒューズ
出演:林ゆりえ、吉瀬智弘 ほか
指揮:大井剛史
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

メンデルスゾーン交響曲第3番「スコットランド」の一楽章を除く三つの楽章を使用。よく見るバランシン作品とはひと味ちがう。スコットランドを舞台とするロマンティックバレエの「ラ・シルフィード」を想わせる衣裳や動きが見てとれる。初めは面白く見たが、次第に眠くなった。ダンサーの内側からあまり気が出ていない。

ユニット<アルトノイ>
島地保武(ザ・フォーサイス・カンパニー・ダンサー)
酒井はな<新作> 「3月のトリオ」
振付:島地保武、酒井はな
音楽:バッハ
チェロ:古川展生

柔道の畳のような区画の下手の手前角に、チェロ奏者が客席に背中を向けて座る。バッハの無伴奏チェロ組曲。何番だったか。アルマンドジーク、無音からサラバンド? 照明。2階のA席から見たが、周りのほとんどの客はこうした〝アート〟を欲していない。そう感じた。そのうえ、この手の作品を上演するには会場が広すぎる。

首藤康之 中村恩恵
「The Well-Tempered」
振付:中村恩恵
音楽:バッハ
ピアノ:若林顕

質の高いパフォーマンス。見せ方のうまさ。中村らはプロのパフォーマーだと思わせる。何かが内側から外へ大きく伸びやかに広がり出た。

貞松・浜田バレエ団
ドン・キホーテ」第一幕から
原振付:マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー
再演出・指導:ニコライ・フョードロフ
新演出・振付:貞松正一郎
音楽:ミンクス
出演:瀬島五月、アンドリュー・エルフィンストン ほか
指揮:大井剛史
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

総じて踊りも音楽も「ドン・キ」の快活さがあまり感じられない。やや遅めのテンポは指揮者ではなく芸術監督の指示かも知れない。新国立バレエの新制作『眠りの森の美女』でゲスト出演するのは、キトリ役のダンサーなのか。うーん。

吉田都
フィリップ・バランキエヴィッチ
シュツットガルト・バレエ団プリンシパル
ラ・シルフィード」から パ・ド・ドゥ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:レーヴェンスヨルド
指揮:大井剛史
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

吉田は、動きやマイムがふわりと柔らかい。新国立でヨハン・コボーと踊った舞台を想い出した(あれから14年も経つのか)。バランキエヴィッチはさすがに洗練された伸びやかな踊りだが、ブルノンヴィルの快楽は乏しい(両回転しなかったのは残念)。演奏は丁寧だが、沸き立つような喜びはあまりない。

東京シティ・バレエ団
「ベートーベン 交響曲第7番」
振付:ウヴェ・ショルツ
音楽:ベートーベン
出演:志賀育恵、佐合萌香、キム・セジョン ほか
指揮:大井剛史
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

じつに面白い作品。第七交響曲のこの部分でこんな動きをさせるのかと何度も笑みがこぼれた。同じプロットレス・バレエでも、音符が踊っているようなバランシンとはまったく異なる。ダンサーは激しく動いているのに、動的というよりはむしろ静的な印象。ただし、音楽から感受されるさまざまな音圧や熱量と等価のエネルギーが、静的に見えるダンサーたちの動きの背後で渦巻いている。そんな感じ。もう一度見てみたい。
カーテンコール。なぜカーテンを上げたまま同じ挨拶を二度も三度も繰り返させるのだろう。カーテン(緞帳)の上げ下ろしにはかなりコストがかかるからという人もいる。そうなのか。新国立劇場での無様なカーテンコールは、電気代を節約するためなのか。カーテンコールは客席と舞台上のアーティストたちとが〝対話〟を交わす唯一の貴重な時間である。この点は欧米の劇場を見習って欲しい。