準・メルクル指揮の新日本フィル(崔文洙コンマス)を2公演聴いた。
まずは#521定演(3月6日 19:15/サントリーホール)。
バレエ好きには興味深い選曲。演奏はたしかに耳には聞こえだが、先週のスピノジのように、身体全体(官能)に響いてこない(http://d.hatena.ne.jp/mousike/20140305/1394009479)。そのせいかやたらに眠かった。
さすがに前半とは指揮者の意気込みが異なる。一楽章のホルンのソロで少し頬が緩んだが、それだけ。あまり面白くない。やはり身体に来ない。要所でテンポを動かすが、そこにセンス(意味)を感じない。ブラボーが飛んだが、理解不能。オケは若干ほころびもあった。
三日後「すみだ平和記念コンサート2014」を聴いた(3月9日 15時/すみだトリフォニーホール)。
アルノルト・シェーンベルク『地には平和を』op. 13
栗友会合唱団(指揮:栗山文昭)
オリヴィエ=ウジェーヌ=プロスペール=シャルル・メシアン『リストの昇天――四つの交響的瞑想』
『地には平和を』は、少し詰めは甘いが、温かみのある合唱。
『キリストの昇天』は昨年パイプオルガンで聴いたが(鈴木優人と勅使川原三郎のコラボ)、オケ版は初めて。トランペットは音色はよいのだが、いまひとつ十全でない。そんなことより、そもそもメルクルの指揮は、演奏しているオケ団員に響いてくるものが乏しいのではないか。いわんや観客においてをや。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『レクイエム』ニ短調 K. 626
天羽明惠(ソプラノ)、重松みか(メゾ・ソプラノ)、松原友(テノール)、大沼徹(バリトン)
栗友会合唱団(指揮:栗山文昭)
こんな腑抜けたレクイエムを聴いたのは初めて。何もない。この指揮者は何をしたいのか。かたちだけ整えても、魂を入れなければ音楽ではなくただの音にすぎない。コーラスもオケもソロイストも、気持ちを入れて演奏しよう(歌おう)にも、できなかったのではないか(特にソロイストは宗教音楽を歌うスタイルではない)。パトスのコンマス崔文洙は、不完全燃焼に戸惑っているように見えた。これでは、東京大空襲で亡くなった10万人の魂にはとても届かない(ここでもブラボーが飛んだのには驚いた、なんでもいいのか)。
来週のトリフォニー定期も同じ指揮者だ。「定評のあるドイツ・レパートリー」なら、違う顔を見せてくれるのか。