小林紀子バレエ・シアター『マノン』2011 島添亮子&ロバート・テューズリー

昨日から新国立劇場バレエの『マノン』が開幕した。そのメモを記す前に、昨夏、小林紀子バレエシアターが上演した『マノン』のメモを転記する。

バレエの『マノン』を久し振りに観た(新国立劇場/2011.8.27)。自分が『マノン』を作品として好むことをあらためて確認。驚嘆すべき振付。そもそもバレエの素晴らしさを初めて知ったのが、99年NHKホールで観たシルヴィ・ギエム主演ロイヤルバレエの『マノン』(デ・グリュー=ジョナサン・コープ、レスコー=イレク・ムハメドフ)だった。その後、03年に新国立(アレッサンドラ・フェリ、ロバート・テューズリー、ドミニク・ウォルシュ/酒井はな、ウォルシュ、テューズリー/クレールマリ・オスタ、デニス・マトヴィエンコ、小嶋直也)、05年にロイヤルバレエ(ダーシー・バッセル、ロベルト・ボッレ/アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー/シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル/タマラ・ロホ、ロバート・テューズリー)をいずれも全キャストで見、そして今回の小林となる。
テューズリーのデ・グリューを観るのはしたがって三回目だが、やはり素晴らしいマクミランダンサーだ。一幕の挨拶のソロは、六年前と比べるとやや身体の硬さ(年齢のせい?)のようなものを感じたが、それでもアラベスクが雄弁に語り、知的な味がある。身体の重みと撓り。そのあと続くパ・ド・ドゥでは、マノン役の島添亮子をしっかりサポートし、マクミランのフォルム形成に大きく寄与していた。続く二場のパ・ド・ドゥでも同様。島添も初役でこの難しい踊りをよくこなしていた。身体能力(運動神経)がかなり高いと思う。性格的にはマノンタイプではないように思われたが、実際に観ると、そうでもない。なかなかの悪女振りだ。特にGMとのからみなどは、男を手玉に取る女を、自分の身体/精神のなかに見出していた。レスコーを踊った奥村康祐は、演技は悪くないが、小柄なせいか踊りが軽く、しかも不完全で、マクミランのフォルムがまったく出ない。
音楽は新編曲らしく、以前のものよりシンプルかつ洗練されていたが、そのぶん色彩感が乏しいようにも感じた。ただし、これは編曲のためなのか、小編成(?)のせいなのかは不明(アラン・バーカー指揮/東京ニューフィルハーモニック管弦楽団)。美術もかつて見たもの(ジョージアディス)とは違っており(ピーター・ファーマー)、きれいな感じで『マノン』にしては清潔すぎるかも知れない。