3月のフィールドワーク予定 2020/コロナで中止?【さらにさらに中止が】【再再追加】

新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に公演中止が出ている。初動で専門的知見に基づいた十全な対応をとっていれば、こんなことには…。大変残念だ。新国立劇場バレエの『マノン』は見る機会が少ないだけに最後まで上演してほしかった。特に米沢唯と井澤駿(デ・グリュー)の舞台(2/29)が流れたのは本当に悔やまれる。あまり知られていないようだがダンサーたちは劇場(運営財団)職員とは違ってギャラ制だ。公演が中止になれば、収入も減る。そうした補償は考えられているのだろうか。今後も状況(というより政府の意向)によっては中旬以降の公演もあやうい。劇場や主催者は右へ倣えで一律に中止したりせず、観客に十分な注意喚起と安全対策を講じた上で予定通り開催してほしい。劇場やホールの観客席より、満員電車の方がよほど危険に思えるが。【危惧したとおり新国立劇場は《コジ・ファン・トゥッテ》も中止にした。3.11以降の状況と似てきた感がある。あのときは放射能、今度は新型コロナウィルス。科学的なデータをベースに説得的な説明ができない限り、海外のアーティストは来日に踏み切れないだろう。たとえ来日して無事公演を終えたとしても、帰国したら2週間は隔離されてしまう。だが、カヴァー歌手は何のためキャストされているのか。2011年4月《ばらの騎士》でそうしたように、日本在住のアーティストで上演する方途はなかったのか。】【19日の新日本フィルも中止に。どこまで続くだろう。3/10】【20日新国立劇場演劇も中止。この劇場は残念ながら政府の言いなりで、独自の判断など期待できそうにない。3/11】

1日(日)14:00 ヘンデル『シッラ』全3幕 HWV 10 イタリア語上演/日本語字幕付日本初演音楽監督ファビオ・ビオンディ(指揮・ヴァイオリン)管弦楽エウローパ・ガランテ/演出:彌勒忠史/美術:tamako☆/衣裳:友好まり子/照明:稲葉直人(ASG)/舞台監督:大澤 裕(ザ・スタッフ)/映像:田中有紀(㈱ストロベリーメディアアーツ)/演出助手:家田淳/台本字幕翻訳:本谷麻子/[配役]シッラ=ソニア・プリナ(コントラルト)/クラウディオ=ヒラリー・サマーズ(コントラルト)/メテッラ=スンヘ・イム(ソプラノ)/レピド=ヴィヴィカ・ジュノー(メゾ・ソプラノ)/フラヴィア=ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ)/チェリア=マリア・イノホサ・モンテネグロ(ソプラノ)/神=ミヒャエル・ボルス(バリトン)/スカブロ=神谷真二(黙役)/天使ほか=桧山宏子/板津由佳(エアリエル)/兵士ほか=春日克之/佐久本歩夢(BLUE TOKYO)@神奈川県立音楽堂

7日(土)14:00 こつこつプロジェクト―ディベロップメント―リーディング公演『リチャード三世』作:ウィリアム・シェイクスピア/翻訳:松岡和子/構成・演出:西 悟志/出演:池田有希子 大久保美智子 塚瀬香名子 野口俊丞 三原玄也 山田宏平 ほか @新国立小劇場

 13日(金)19:00 こつこつプロジェクト リーディング公演『スペインの戯曲』作:ヤスミナ・レザ/翻訳:穴澤万里子/演出:大澤 遊/出演:那須左代子 斉藤直樹 中村美貴 デジルバ・安奈 ほか @新国立小劇場

 18日(水)18:30 新国立劇場オペラ《コジ・ファン・トゥッテ》全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:W. A. モーツァルト/台本:ダ・ポンテ/指揮:パオロ・オルミ/演出:ダミアーノ・ミキエレット/美術・衣裳:パオロ・ファンティン/照明:アレッサンドロ・カルレッティ/[キャスト]フィオルディリージ:エレオノーラ・ブラット/ドラベッラ:アンナ・ゴリャチョーワ/デスピーナ:高橋薫子/フェルランド:ジョヴァンニ・サラ/グリエルモ:レナート・ドルチーニ/ドン・アルフォンソ:シモーネ・アルベルギーニ/管弦楽:東京交響楽団/合唱:新国立劇場合唱団 @新国立劇場オペラハウス

19日(木)19:00 新日本フィル定演 #617 ジェイドサントリーホール・シリーズ〉ウェーベルンパッサカリア op. 1/ベルク:7つの初期の歌曲*/ブラームス交響曲第4番 ホ短調 op. 98/指揮:上岡敏之/ソプラノ:ユリアーネ・バンゼ* @サントリーホール

20日(金)14:00 劇団銅鑼公演 No. 54『蝙蝠傘と南瓜』作・演出・衣裳:詩森ろば/美術:杉山 至/照明:榊美香/音楽:後藤浩明/音響/青木タクヘイ/舞台監督/村松眞衣 舞台監督助手/植木 圭/演出助手/池上礼朗 バリアフリーサービス/佐藤響子/制作/田辺素子/[キャスト]島 隆(日本初の女性写真師):林田麻里(ラッキーリバー)/島 霞谷(画家・写真家):館野元彦/小林小太郎(学者):山形敏之/高橋由一(油絵画家):野内貴之/川上冬崖(水彩画家):鈴木正昭/厳田信吾(開成所頭取):佐藤文雄/厳田チヅ(厳田新吾の娘):宮﨑愛美/お榮(葛飾北斎の娘 日本画家):金子幸枝/雪之介(役者):齊藤千裕/千代吉(役者):竹内奈緒子/ツタ(浅草料亭の仲居):北畠愛美/サト(浅草料亭の仲居):早坂聡美/山森鹿雄(郷土史研究家 Wキャスト):山田昭一 千田隼生/柏木尚子(地方新聞記者):馬渕真希 @銅鑼アトリエ

20日(金)19:00 こつこつプロジェクト リーディング公演『あーぶくたった、にいたった』作:別役 実/演出:西沢栄治/出演:龍昇 中原三千代 山森大輔 浅野令子 @新国立小劇場

21日(土)15:00 unrato #6『冬の時代』作:木下順二/演出:大河内直子/美術:石原 敬/照明:大島祐夫/音響:早川 毅/衣裳:小林巨和/音楽:阿部海太郎/舞台監督:齋藤英明/制作:筒井未来/プロデューサー:田窪桜子 西田知佳/[出演]須賀貴匡宮崎秋人壮一帆、青柳尊哉、池田 努、溝口悟光、若林時英、山下雷舞、結城洋平、小林春世、佐藤 蛍、戸塚世那、井上裕朗、羽子田洋子、青山達三 @東京芸術劇場 シアターウエス

【22日(日)15:40 映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」監督:豊島圭介/企画プロデュース:平野隆/プロデューサー:竹内明 刀根鉄太/共同プロデューサー:大澤祐樹 星野秀樹 岡田有正/撮影:月永雄太/録音:小川武/編集:村上雅樹/音楽:遠藤浩二/音楽プロデューサー:溝口大悟/ナレーション:東出昌大/助監督:副島正寛/アシスタントプロデューサー:吉原裕幸諸井雄一 韮澤享峻/企画協力:小島英人/題字:赤松陽構造//出演:三島由紀夫/芥正彦/木村修/橋爪大三郎/篠原裕/宮澤章友/原昭弘/椎根和/清水寛/小川邦雄/平野啓一郎内田樹小熊英二瀬戸内寂聴イオンシネマ板橋】←追加 

【26日(木)14:00 文学座 3月アトリエの会/岸田國士フェスティバル『歳月/動員挿話』「歳月」演出:西本由香/出演:中村彰男 神野 崇 越塚 学 名越志保 吉野実紗 前東美菜子 音道あい 磯田美絵//「動員挿話」演出:所 奏/出演:斉藤祐一 西岡野人 西村知泰 鈴木亜希子 伊藤安那 松本祐華//[スタッフ]美術:島根慈子、石井強司 照明:阪口美和 音響:丸田裕也 衣裳:宮本宣子 舞台監督:岡野浩之/制作:田中雄一朗、友谷達之、最首志麻子/宣伝美術:藤尾勘太郎文学座アトリエ】←行事が中止となり急遽追加

【27日(金)19:00 新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future 2020/第一部「Seul et unique」振付:渡邊峻郁 出演:中島瑞生、渡邊拓朗/「Contact」振付:木下嘉人 音楽:オーラヴル・アルナルズ 出演:米沢 唯、木下嘉人/「福田紘也2020」振付:福田紘也 出演:速水渉悟、宇賀大将、川口 藍、原田舞子、福田紘也//第二部「アトモスフィア」振付:木下嘉人 音楽:ルドヴィコ・エイナウディ 出演:福岡雄大 ピアノ演奏:蛭崎あゆみ/「神秘的な障壁」振付:貝川鐵夫 音楽:フランソワ・クープラン 出演:米沢 唯/「コロンバイン」振付:髙橋一輝 音楽:ソルケット・セグルビョルンソン 出演:池田理沙子、渡辺与布、玉井るい、趙 載範、佐野和輝、髙橋一輝/「accordance」振付:福田圭吾 音楽:峯モトタカオ、アルヴァ・ノト 出演:小野絢子、米沢 唯、福岡雄大、木下嘉人、五月女 遥、福田圭吾//第三部 コンポジション・プロジェクトによる作品『〇 ~wa~』アドヴァイザー:遠藤康行 音楽:平本正宏[グループDO/動]出演:渡邊峻郁 木村優里 益田裕子 稲村志穂里 太田寛仁 関 優奈 徳永比奈子 中島春菜 中島瑞生 原田舞子 廣川みくり 渡部義紀 伊東真梨乃 @新国立小劇場】←忘れてた

28日(土)13:00 新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future 2020/第一部「Seul et unique」振付:渡邊峻郁 出演:中島瑞生、渡邊拓朗/「Contact」振付:木下嘉人 音楽:オーラヴル・アルナルズ 出演:米沢 唯、木下嘉人/「福田紘也2020」振付:福田紘也 出演:速水渉悟、宇賀大将、川口 藍、原田舞子、福田紘也//第二部「アトモスフィア」振付:木下嘉人 音楽:ルドヴィコ・エイナウディ 出演:福岡雄大 ピアノ演奏:蛭崎あゆみ/「神秘的な障壁」振付:貝川鐵夫 音楽:フランソワ・クープラン 出演:米沢 唯/「コロンバイン」振付:髙橋一輝 音楽:ソルケット・セグルビョルンソン 出演:池田理沙子、渡辺与布、玉井るい、趙 載範、佐野和輝、髙橋一輝/「accordance」振付:福田圭吾 音楽:峯モトタカオ、アルヴァ・ノト 出演:小野絢子、米沢 唯、福岡雄大、木下嘉人、五月女 遥、福田圭吾//再三部 コンポジション・プロジェクトによる作品『A to THE』アドヴァイザー:遠藤康行 音楽:平本正宏 [グループZA/座]出演:柴山紗帆 飯野萌子 広瀬 碧 福田紘也 益田裕子 赤井綾乃 太田寛仁 関 晶帆 仲村 啓 西川 慶 原田舞子 樋口 響 廣川みくり 横山柊子@新国立小劇場

 

2月のフィールドワーク予定 2020【修正】

 今月は青年団の『東京ノート』が国内では8年ぶりに再演され、究極の〝多言語同時多発演劇〟という『東京ノート・インターナショナルバージョン』(7カ国版)も上演される。マクミラン振付のバレエ『マノン』を新国立劇場が再演するのも8年ぶり。シルヴィ・ギエムの『マノン』(英国ロイヤルバレエ NHKホール 1999)でバレエの魅力に取り憑かれた。絶対に外せない演目だ。米沢唯がどんなマノンを見せてくれるか。注視したい。

6日(木)18:30 新国立劇場オペラ《セビリアの理髪師》全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ/指揮:アントネッロ・アッレマンディ/演出:ヨーゼフ・E.ケップリンガー/美術・衣裳:ハイドルン・シュメルツァー/照明:八木麻紀[キャスト]アルマヴィーヴァ伯爵:ルネ・バルベラロジーナ:脇園 彩/バルトロ:パオロ・ボルドーニャ/フィガロ:フローリアン・センペイ/ドン・バジリオ:マルコ・スポッティ/ベルタ:加納悦子/フィオレッロ:吉川健一/隊長:木幡雅志/アンブロージオ:古川和彦/管弦楽:東京交響楽団/合唱:新国立劇場合唱団 @新国立劇場オペラハウス

7日(金)19:00 東京ノート・インターナショナルバージョン』作・演出:平田オリザ/台本翻訳協力:ソン・ギウン、サーウィター・ディティヨン、ロディ・ベラ、コディ・ポールトン、陳 彦君、ブライアリー・ロング/出演:山内健司 松田弘子 能島瑞穂 長野 海 鄭 亜美 中村真生 ブライアリー・ロング 佐藤 滋 前原瑞樹 藤谷みき 淺村カミーラ 木村トモアキ 多田直人(以上 青年団) 井垣ゆう(兵庫県豊岡市立城崎中学校) 陳 忻 趙 欣怡 パッチャラワン・クルアパン カモンワス・ジュティサムット アントネット・ゴー メイエン・エスタネロ マンジン・ファルダス ペク・ジョンスン チョン・スジ/舞台美術:杉山 至/舞台美術アシスタント:濱崎賢二/舞台監督:武吉浩二(campana)/舞台監督補佐:海津 忠/演出助手:陳 彦君/照明:富山貴之/照明補佐:三嶋聖子 井坂 浩/音響:泉田雄太 櫻内憧海/字幕:西本 彩/衣裳:正金 彩/通訳:齋藤晴香/城崎食事:森 友樹(急な坂スタジオ) 佐藤亜里紗(boxes Inc.)/宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子/宣伝写真:佐藤孝仁/宣伝美術スタイリスト:山口友里/撮影協力:千葉県立富津公園 千葉県君津土木事務所/制作:太田久美子 西尾祥子(sistema) 有上麻衣 金澤 昭 @吉祥寺シアター

16日(日)15:00 BCJ #163 定演〈祈りのモテット〉J.S. バッハ《われらの悩みの極みにありて》BWV 641*/モテット《主に向かいて新しき歌をうたえ》BWV 225/モテット《み霊はわれらの弱きを助けたもう》BWV 226/モテット《来ませ、イエスよ、来ませ》 BWV 229/カンタータ《わが片足すでに墓穴に入りぬ》BWV 156より〈シンフォニア〉/詩編51編《消してください、いと高き主よ、私の罪を》BWV 1083〜ペルゴレージスターバト・マーテル》による〜指揮:鈴木 雅明/ソプラノ:松井 亜希/アルト:ベンノ・シャハトナー/テノール:櫻田 亮/バス:ドミニク・ヴェルナー/オルガン独奏:鈴木 優人*/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン @オペラシティコンサートホール

19日(水)19:00 東京ノート』作・演出:平田オリザ/出演:山内健司 松田弘子 秋山建一 小林 智 兵藤公美 能島瑞穂 大竹 直 長野 海 堀 夏子 鄭 亜美 中村真生 井上みなみ 佐藤 滋 前原瑞樹 中藤 奨 永山由里恵 藤谷みき 木村トモアキ 多田直人 南風盛もえ/スタッフ:同上 @吉祥寺シアター

21日(金)14:00 新国立劇場バレエ団『マノン』ゲネプロ新国立劇場オペラハウス

22日(土)14:00 新国立劇場バレエ団『マノン』振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ/美術・衣裳:ピーター・ファーマー/照明:沢田祐二/編曲・指揮:マーティン・イェーツ/管弦楽:東京交響楽団[主要キャスト]マノン:米沢 唯/デ・グリュー:ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)/レスコー:木下嘉人ムッシューG.M.:中家正博/レスコーの恋人:木村優里/物乞いのリーダー:福田圭吾 @新国立劇場オペラハウス

23日(日・祝)14:00 新国立劇場バレエ団『マノン』[主要キャスト]マノン:米沢 唯/デ・グリュー:ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ・プリンシパル)/レスコー:木下嘉人新国立劇場オペラハウス

25日(火)14:00 CAPI『Gengangere 再び立ち現れるもの/亡霊たち』作:イプセン/翻訳・演出:毛利三彌/出演:久保庭尚子 西山聖了(YOUGOTRUST) 中山一朗 髙山春夫(プロダクション・エース) 藤井由紀(唐組)/演出助手:中川順子/照明:渡邉雄太/照明操作:渡邉京子、横山紗木里/音響:渡邉邦男/宣伝美術:海野温子/舞台監督/制作補助:世amI/芸術総監督:平田オリザ/技術協力:鈴木健介(アゴラ企画)/制作協力:木元太郎(アゴラ企画)@こまばアゴラ劇場

25日(火)18:30 新国立劇場 演劇研修所『社会の柱』作:ヘンリック・イプセン/翻訳:アンネ・ランデ・ペータス/演出:宮田慶子/美術:池田ともゆき/照明:中川隆一/音響」:信澤祐介/衣裳:西原梨恵/演出助手:高嶋柚衣(11期修了)/翻訳協力:今村麻子/舞台監督:澁谷壽久/出演:今井仁美 大久保眞希 島田恵莉 松内慶乃 松村こりさ ユーリック永扇(以上 新国立劇場演劇研修所第13期生)/河波哲平 河野賢治 宮崎隼人/古川龍太(1期修了) 原 一登(4期修了) 野坂 弘(7期修了) 鈴木麻美(8期修了) 髙橋美帆 (9期修了)/小比類巻諒介(11期修了) 椎名一浩(11期修了)/後援:ノルウェー大使館/演劇研修所長:宮田慶子/主催:文化庁新国立劇場 @新国立小劇場

26日(水)19:00 新国立劇場バレエ団『マノン』[主要キャスト]マノン:小野絢子/デ・グリュー :福岡雄大/レスコー:渡邊峻郁ムッシューG.M.:中家正博/レスコーの恋人:寺田亜沙子/物乞いのリーダー:速水渉悟 @新国立劇場オペラハウス

29日(土)14:00 新国立劇場バレエ団『マノン』[主要キャスト]マノン:米沢 唯/デ・グリュー:井澤 駿/レスコー:木下嘉人ムッシューG.M.:中家正博/レスコーの恋人:木村優里/物乞いのリーダー:井澤 諒 @新国立劇場オペラハウス ←中止の理由は新型コロナウィルスの感染拡大を防止するため。デ・グリュー役が井澤駿に変われば、米沢唯は、ムンタギロフ相手とはまた違ったマノンを生きたはず。井澤はカンパニーで最もデ・グリューに合っていただけに大変残念だ。全幕は当分無理だろうが、近いうちにガラか何かで二人が出会いや沼地のパ・ド・ドゥを踊るのをぜひ見てみたい。

1月のフィールドワーク予定 2020/一年を振り返る【再追記】

2019年もあとわずか。この一年間、オペラ、バレエ(ダンス)、演劇にクラシックコンサートを含めた劇場文化(芸術)をフィールドワークしてきたが、公演数は117。例年と大差ない。ただ、バレエが少し減り演劇が増えている。ここで簡単に一年を振り返りたい。観客(聴衆)としての評価基準は極めてシンプル。チケットを買って再度見(聴き)たいかどうかだ。新国立劇場の公演は、オペラ・バレエ・演劇のいずれも全演目を見ている。まずはこの三部門について簡単に。

オペラでは大野和士が芸術監督になり、力のある日本人歌手が主役級に抜擢されるようになった。これは大変よかったと思う。舞台は客席と地続きであるべきだ(〝地続き文化〟についてはこちら)。ただ、昨年の《フィデリオ》に匹敵する舞台は見出せなかった。

バレエでは、やはり米沢唯。全幕物で舞台を生きるあり方に加え、美しいラインや型(様式)が単発的に求められるガラ公演でも素晴らしい踊りを見せた。『バヤデール』はすでに書いたから、『ロミ&ジュリ』について手短に。米沢は、ジュリエットが自立前の少女から恋愛と苦境を経て成長するありようを踊りで見事に表現した。終幕で自刃する時、乳母と人形で遊ぶシーンから後の生の過程すべてがフラッシュバックするかのよう。ロミオの渡邊峻郁もバルコニーシーンの踊りなど目を見張った。速水渉悟の天真爛漫なベンボーリオは、軸のぶれない回転が素晴らしく、これから楽しみ(あとはサポートか)。福岡雄大のティボルトは見応えがありロミオ役よりフィットしていた。

新国立の演劇は、残念ながらもう一度見たいと思う舞台はなし。「こつこつプロジェクト」はよいと思う(西悟志の『リチャード三世』は大変面白かった)。が、全般的に客席の身体まで熱が伝わってこない。英米物への偏りも少し気になる。オリジナルは別としても、チェーホフギリシャ悲劇まで英米の翻案を使う必要があるのだろうか。

音楽では、鈴木雅明 率いるBCJベートーヴェン 第九、特に合唱は新鮮な驚きだった。上岡敏之新日本フィルが中高生の演劇とコラボしたバレエ音楽『ロミオとジュリエット』佐藤俊介とオランダ・バッハ協会管弦楽団はどちらもブログに書いたが、特筆すべきコンサート。

2020年は4月から今より自分の時間がとれる見込みだ。その分ブログの更新を増やしたいが、果たしてそうなるかどうか。

【8日(水)岡﨑乾二郎監修「坂田一男 捲土重来」展東京ステーションギャラリー←追記

10日(金)19:00  劇団俳優座 No.340『雉はじめて鳴く』作:横山拓也(iaku) /演出:眞鍋卓嗣/美術:杉山 至/照明:桜井真澄(株式会社 東京舞台照明)/効果:木内拓(株式会社 音映)/衣裳:樋口 藍(アトリエ藍)/舞台監督:関裕麻/出演:天野 眞由美 山下 裕子 河内 浩 塩山 誠司 清水 直子 若井なおみ 保 亜美 宮川 崇 深堀 啓太朗 後藤 佑里奈 八頭司 悠友 @俳優座劇場

11日(土)14:00 新国立劇場バレエ「ニューイヤー・バレエ」『セレナーデ』振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」ハ長調  出演:寺田亜沙子、柴山紗帆、細田千晶、井澤 駿、中家正博/『ライモンダ』よりパ・ド・ドゥ 振付:マリウス・プティパ 音楽:アレクサンドル・グラズノフ  改訂振付・演出:牧 阿佐美 出演:小野絢子、福岡雄大『海賊』よりパ・ド・ドゥ 振付:マリウス・プティパ 音楽:リッカルド・ドリーゴ  出演:木村優里、速水渉悟/『DGV Danse à Grande Vitesse』振付:クリストファー・ウィールドン 音楽:マイケル・ナイマン「MGV(超高速音楽)」 美術・衣裳:ジャン=マルク・ピュイサン 照明:ジェニファー・ティプトン 出演:小野絢子、福岡雄大、本島美和、米沢 唯、寺田亜沙子、渡邊峻郁、木下嘉人、中家正博//指揮:マーティン・イエイツ/管弦楽:東京交響楽団新国立劇場オペラハウス

【12日(日)18:15-20:40 映画『パラサイト 半地下の家族』監督:ポン・ジュノ/製作:クァク・シネ ムン・ヤングォン チャン・ヨンファン/脚本:ポン・ジュノ ハン・ジヌォン/撮影:ホン・ギョンピョ/美術:イ・ハジュン/衣装:チェ・セヨン/編集:ン・ジンモ/音楽:チョン・ジェイル/[キャスト]キム・ギテク:ソン・ガンホ/パク・ドンイク:イ・ソンギュン/パク・ヨンギョ:チョ・ヨジョン/キム・ギウ:チェ・ウシク/キム・ギジョン:パク・ソダム/ムングァン:イ・ジョンウン/キム・チュンスク:チャン・ヘジン/パク・ダヘ:チョン・ジソ/パク・ダソン:チョン・ヒョンジュン/ミニョク:パク・ソジュン @イオンシネマ板橋】←追記

13日(月)14:00 新国立劇場バレエ「ニューイヤー・バレエ」『セレナーデ』出演:同上/『ライモンダ』よりパ・ド・ドゥ  出演:米沢 唯、渡邊峻郁/『海賊』よりパ・ド・ドゥ 出演:同上/『DGV Danse à Grande Vitesse』出演:同上 @新国立劇場オペラハウス

【17日(金)14:00  劇団俳優座 No.340『雉はじめて鳴く』作:横山拓也(iaku) /演出:眞鍋卓嗣/美術:杉山 至 @俳優座劇場】←追記

17日(金)19:15 新日本フィル #615 定演 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉シューベルト交響曲第6番 ハ長調 D589/ヴェルディ:歌劇『ドン・カルロ』より「王妃の舞踏会」/メンデルスゾーン交響曲第4番 イ長調 op. 90 「イタリア」指揮:上岡敏之すみだトリフォニーホール

24日(金)18:30 新国立劇場オペラ《ラ・ボエーム》全4幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:ジャコモ・プッチーニ指揮:パオロ・カリニャーニ/演出:粟國 淳/美術:パスクアーレ・グロッシ/衣装:アレッサンドロ・チャンマルーギ/照明:笠原俊幸/ミミ:ニーノ・マチャイゼロド/ルフォ:マッテオ・リッピ/マルチェッロ:マリオ・カッシ/ムゼッタ:辻井亜季穂/ショナール:森口賢二/コッリーネ:松位 浩/ベノア:鹿野由之/アルチンドロ:晴 雅彦/パルピニョール:寺田宗永/管弦楽:東京交響楽団/合唱:新国立劇場合唱団 @新国立劇場オペラハウス

25日(土)14:00 開館65周年記念  川端康成生誕120周年記念作品 室内オペラ《サイレンス》(フランス語上演/日本語字幕付)日本初演/原作 : 川端康成「無言」/作曲・指揮:アレクサンドル・デスプラ/台本:アレクサンドル・デスプラ/ソルレイ/演出・映像:ソルレイ/美術・照明:エリック・ソワイエ/衣装:ピエールパオロ・ピッチョーリ/演奏:アンサンブル・ルシリン/出演:ジュディス・ファー(ソプラノ)、ロマン・ボックラー(バリトン)、ローラン・ストッカー(コメディーフランセーズ/語り) @神奈川県立音楽堂

【29日(水)18:25 映画『風の電話』監督:諏訪敦彦/脚本:狗飼恭子 諏訪敦彦/撮影:灰原隆裕/照明:舟橋正生/編集:佐藤崇/音楽:世武裕子/助監督:是安祐/出演:モトーラ世理奈(ハル)西島秀俊(森尾)、西田敏行(今田)、三浦友和(公平)、渡辺真起子(広子)、山本未來占部房子池津祥子石橋けい、篠原篤、別府康子 @イオンシネマ板橋】←再追記

12月のフィールドワーク予定 2019

遅ればせながら、終了した公演も含めた今年最後のフィールドワーク予定を記す。 

 1日(日)14:00 中村恩恵×新国立劇場バレエ団『ベートーヴェンソナタ振付:中村恩恵/音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/照明:足立 恒/美術:瀬山葉子/衣裳:山田いずみ/音楽監修・編曲:野澤美香/音響:内田 誠[キャスト]ベートーヴェン:福岡雄大ジュリエッタ:米沢 唯/アントニエ:小野絢子/カール:井澤 駿/ヨハンナ:本島美和/ルートヴィヒ:首藤康之//池田理沙子、井澤 諒、貝川鐵夫、 木村優里、寺田亜沙子、 福田圭吾、渡邊峻郁、奥田花純 、 木下嘉人、五月女 遥/宇賀大将、 小野寺 雄、清水裕三郎、 髙橋一輝、玉井るい、中田実里、 福田紘也、 益田裕子、関 晶帆、 中島瑞生、 渡邊拓朗 @新国立中劇場

3日(火)13:40 映画『i-新聞記者ドキュメント-』監督:森 達也/出演:望月衣塑子/企画・製作・エクゼクティヴプロデューサー:河村光庸/監督補:小松原茂幸 編集:鈴尾啓太 音楽:MARTIN (OAU/JOHNSONS MOTORCAR)「i-新聞記者ドキュメント-」製作委員会@イオンシネマ板橋

6日(金)19:15 新日本フィル#614 定演 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉ストラヴィンスキー:室内オーケストラのための協奏曲 変ホ長調ダンバートンオークス」/ヘンデル:合奏協奏曲 ト長調 op. 6-1 HWV 319/ヘンデル:オルガン協奏曲第1番 ト短調 op. 4-1, HWV 289*/コレッリ:合奏協奏曲 ト短調 「クリスマス協奏曲」 op. 6-8 /ストラヴィンスキー組曲「プルチネッラ」/指揮:デイヴィッド・ロバートソン/オルガン:水野 均* @すみだトリフォニーホール

7日(土)15:00 新国立劇場 演劇『タージマハルの衛兵』作:ラジヴ・ジョセフ/翻訳:小田島創志/演出:小川絵梨子/美術:二村周作/照明:松本大介/音響:加藤 温/衣裳:原まさみ/演出助手:西 祐子/舞台監督:福本伸生/出演:成河 亀田佳明 @新国立小劇場

8日(日)13:30 『泰山木の木の下で』作:小山祐士/演出:丹野郁弓/装置:石井みつる/照明:前田照夫/衣裳:緒方規矩子/音楽:斎藤一郎/編曲:淡谷幹彦/効果:岩田直行/舞台監督:風間拓洋/[キャスト]木下刑事:塩田泰久/神部ハナ:日色ともゑ/須崎刑事:吉田正朗/小使:松田史朗/マリという女:八木橋里紗/出前持ちの青年:大中耀洋/髪を垂らした女:桜井明美/磯部の奥さん:神保有輝美/田舎ふうの紳士:横島 亘/若い船員:平野 尚/漁師の女房:船坂博子/医者:天津民生/看護婦:佐々木郁美/歌を唄う男:千葉茂則/ギターを弾く男:淡谷幹彦(客演)@三越劇場

12日(木)14:00 『常盤坊海尊』作:秋元松代/演出:長塚圭史/音楽:田中知之(FPM)/美術:堀尾幸男/照明:齋藤茂男/音響:徳久礼子/扮装:柘植伊佐夫/ムーブメント:平原慎太郎/琵琶指導:友吉鶴心/方言指導:佐藤 誠/演出助手:城野 健 /舞台監督:足立充章・横沢紅太郎/プロダクション・マネージャー:安田武司/技術監督:堀内真人/制作:尾崎裕子/プロデューサー:勝 優紀/制作統括:横山 歩/出演:白石加代子 中村ゆり 平埜生成 尾上寛之 長谷川朝晴 高木 稟 大石継太 明星真由美 弘中麻紀 藤田秀世 金井良信  佐藤真弓 佐藤 誠 柴 一平 浜田純平 深澤 嵐 大森博史 平原慎太郎 真那胡敬二 [子役]山崎雄大 白石昂太郎 室町匠利 木村海翔 藤戸野絵 @KAAT 神奈川芸術劇場 ホール

14日(土)13:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』音楽:チャイコフスキー/振付:ウェイン・イーグリング/美術:川口直次/衣裳:前田文子/照明:沢田祐治/主演:米沢 唯(クララ)井澤 駿(王子)/指揮:アレクセイ・バクラン/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:東京少年少女合唱隊新国立劇場オペラハウス

14日(土)18:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』/主演:小野絢子(クララ)福岡雄大(王子)新国立劇場オペラハウス

15日(日)18:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』/主演:米沢 唯(クララ)井澤 駿(王子)新国立劇場オペラハウス

21日(土)13:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』/主演:池田理沙子(クララ)奥村康祐(王子)新国立劇場オペラハウス

21日(土)18:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』/主演:木村優里(クララ)渡邊峻郁(王子)新国立劇場オペラハウス

 

「木下晋展 いのちを描く」2019

「木下晋展 いのちを描く」を見た(11月14日、17日/ギャラリー枝香庵)。

枝香庵は2年前の「木下晋展 表現の可能性」で初めて訪れた。ギャラリーは古い銀座ビルディングの7Fと8Fにあるのだが、広い展示スペース(7F 枝香庵Flat)だけでなく、屋根裏を思わせるこぢんまりした回廊や小部屋(8F)もあり、屋上のテラスではお茶を飲みながら寛げるようになっている。とても居心地がよく、お気に入りの画廊である。

「願い」2019.7.21(125×200cm)

木下晋(1947- )は、硬さの異なる十数種の黒鉛筆を使い分けて細密な人物像を描く〝えんぴつの画家〟として知られる。これまで氏のモデルとなったのは、母、瞽女小林ハル、元ハンセン病患者 桜井哲夫等々。つまり、この画家は〝危機的〟な境遇にある人物を好んで描いてきたといってよい。そんな木下氏が近年集中的に描いているのは、パーキンソン病に罹った妻である。「願い」(上図)もそのひとつ。仕上がる直前に見る機会を得たが、完成形を見るとまた違った感触があった。

横たわる半身。薄目を開け少し口を開いた苦悶の女性。表情だけ見るとこちらも苦しくなってくる。両手はしっかり合わさってはいないが、祈っているようにも見える。なにより彼女の周りに横溢する光が印象的だ。ギャラリーでは一段高くなったスペースの奥に展示され、その両側に大小の「合掌図」が掛けられている(下図)。まさに祭壇だ。光に包まれた女性は、宗教画のような神々しさを湛えている。作者のモデルへの深い愛をひしひしと感じる。

「願い」と二つの「合掌図」

2017年の「視線の行方」も妻を描いた作品。東京で展示するのは初めてで、私もこれが初見。二重瞼が年を重ねて少し垂れ下がっている。が、そこからわずかに覗く瞳はこのうえなく美しい。2年前このギャラリーに出展されていた「視線の光」(2015)と構図は似ているが趣がずいぶん異なる。「行方」では、澄んだ眼は何かを見ているようでもあり、何かに思いを馳せているようでもある。皮膚には深く皺が入り、頭髪はほつれ毛を含めみな白い。額の中央と鼻筋上部のやや左(本人からは右)に亀裂がある。肉体を徐々に蝕んでいく老いと病。が、そうした次元とは別の、透明な何かが瞳から視える。肉体は朽ちていくとしても、そこに宿る精神(魂)が、その美しさがここにある。それを、「痛み傷ついた老人の肉体」(阪田勝三)を克明に描き尽くすことで表現しえた木下晋に、画家としての凄味を感じた。

「視線の行方」2017.11.23(125×200cm)と「合掌図」2019.11.9(110×50cm)

「視線の行方」部分

 この部屋には他に旧作の「棄民」や「待つ人」が展示されている。ホームレスを描いた「棄民」は、氏と初めて会ったとき〝できたて〟として見た作品。懐かしい。もう21年前か。

「棄民」1998(190×100)と「待つ人( I氏母堂)」1996(190×100)

8Fの小部屋や回廊には、木下氏に大きな影響を与えた瞽女小林ハルのデッザンや、猫を描いた小品、自画像等が展示されている。

映画監督の瀧澤正治氏(左)と木下晋氏

じつは、もう一度「願い」や「視線の行方」と会いたくなり、日曜の午後再訪した。この日は嬉しいことに木下さんも来ていた(前日のねじめ正一と木下氏のトークは都合がつかず断念)。また、日曜は映画監督の瀧澤正治氏が見に来られており、木下氏に紹介された。小林ハルを描いた映画『瞽女』の撮影が終わり、来年3月に公開されるという。構想を含め16年越しの完成だと。まったく知らなかった。ぜひ見たいと思う。

『刻む。ーー鉛筆画の鬼才、木下晋 自伝』城島徹 編(藤原書店)が12月に刊行される。「木下晋展」は21日(木)まで。
 

新国立劇場 演劇『どん底』2019/喜びは伝わったが

ゴーリキーの『どん底』を観た(10月18日 18:30/新国立小劇場)。楽日の三日前となったのは、12日(土)13:00の公演が台風19号の影響で中止となり、振り替えたため。

最後に『どん底』を見たのはもうずいぶん前だ。演出は千田是也(1904-94)、場所は砂防会館だったと思う。調べてみると1980年。他にも見たかも知れないがどうもはっきりしない。

どん底』(1902)全4幕/作:マクシム・ゴーリキー(1868-1936)/翻訳:安達紀子/演出:五戸真理枝/美術:池田ともゆき/照明:坂口美和/音楽監修:国広和毅/音響:中嶋直勝/衣裳:西原梨恵/ヘアメイク:川端富生/アクション:渥美 博/演出助手:橋本佳奈/舞台監督:有馬則純

 例によって時間が経過し細部の記憶は怪しいが、走り書きを頼りにメモする。

ルカ:立川三貴

サーチン:廣田高志

ヴァシリーサ:高橋紀恵

ナターシャ:瀧内公美

クヴァシュナ:泉関奈津子

俳優:堀 文明

ブブノフ:小豆畑雅一

メドヴェージェフ:原金太郎

コスティリョフ:山野史人

クレーシィ:伊原 農

アンナ:鈴木亜希子

男爵:谷山知宏

ペーペル:釆澤靖起

ゾブ:長本批呂士

ナスチャ:クリスタル真希

プロンプター 他:今井 聡

アルリョーシュカ:永田 涼

ダッタン人:福本鴻介

 セットは高速道路か新幹線の高架下。この工事現場に役者仲間が久し振りに集い『どん底』を演じるという趣向。プロンプターもいる。つまり劇中劇だ。第2幕の後半からそのフレームが外れた(というか観客に忘れられた)頃、その幕切れで、ヘルメットを被った工事作業員[高速道路職員らしい](プロンプター役の今井聡)が高架の上部から梯子をゆっくり降りてくる。すると、みな慌てて立ち去り幕。ブレヒト的異化効果? 15分の休憩後、立ち入り禁止の看板が立つ第3幕がスタート。次第に客席側も演技場に。3幕から4幕へのトランジションでは全員でセットを組む。…

第2幕でアンナ(鈴木亜希子)が死んだとき、彼女はベッドから離れ、ハケた役者としてそばで他の演技を見守る。夫クレーシィ(伊原農)が死の床の方へ来ると、アンナ役はゆっくり夫に近づきじっと彼を見る。この間、照明がななめ上から彼女を捉える。まるで死者の霊(妻)が生者(夫)を見つめているかのよう。

木賃宿の亭主コスティリョフ(山野史人)の妻であるヴァシリーサ(高橋紀恵)とペーペル(釆澤靖起)の不倫関係。さらにヴァシリーサの妹ナターシャ(瀧内公美)とペーペルの関係。ペーペルによる亭主殺害…。

様々な人間模様が展開されるが、幕切れで、ハケた役者が次々にサイドの金網ぎわに座り、仲間の芝居を見ている。最後の酒盛りでは演じ終えた役者を含め全員参加する。俳優(堀文明)が首を括ったことを男爵(谷山知宏)が告げる少し前(俳優役はすでにハケて酒盛りに参加)、観客席のカミテ出入り口から警官(今井)が登場。高架下で演じている役者たちの方へ不思議そうに近づき、ハケて見ていたメドヴェージェフ役(原金太郎)が事情を説明する風(互いに警官だ)。芝居はとりあえず最後までやりきり、みなあっという間に解散する。ひとり残った警官はサーチンが壁に描いた「人間」の文字を小声で呟き、肩に付いた無線で報告し…幕。

幕切れについて補足すると、第4幕で、不在のルカから影響を受けたサーチン(廣田高志)がルカ張りの演説をぶる。が、その悦に入ったスピーチをあざ笑うように俳優が首を括った知らせが入る。ルカの言葉に希望を抱いた俳優の死(絶望)。この幕切れは結構苦いが、その苦さ(筆名のゴーリキーは「苦い」の意らしい)は最後の警官の呟き(ニンゲン)等により、かなり弱められた。苦さよりも人間賛歌の趣き。

役者は好かった。宿の亭主コスティリョフ役の山野史人(『ゴドーを待ちながら』は素晴らしかった)、ルカ役の立川三貴はさすがの演技(チェーホフ/中村雄二郎の『プラトーノフ』はいまでも覚えている)。ナスチャのクリスタル真希は研修所の試演会でよく見たが、今回は久し振り。役にぴったりで笑った。ヴァシリーサの高橋は『アンチゴーヌ』では脇を強烈に固めていたが、ここではまた違った魅力を発揮。ペーペルの釆澤は『ナシャ・クラサ』で初めて見た。こういうヴァイオレントな役も出来るのか(さすがに文学座はよい役者を排出している)。他にも歌の巧い役者等々。

設定はとても面白い。工事現場で芝居をする役者たちは実に楽しそう。演劇(すること)の喜びはよく伝わってきた。

一方で、芝居の中身と設定(フレーム)との関係がいまひとつ判然としない。たしかに劇中にもアル中で落ちぶれた俳優が登場する。が、現代の役者一般を「どん底」生活者と見做すのはやはり無理がある(生活が楽ではないとしても、いまや〝河原乞食〟の時代ではない)。 劇の虚構性を破る作業員[高速道路職員](第2幕の終り)や警官(第4幕の終り)については、劇中のダッタン人やゾブが荷担ぎ人夫で、メドヴェージェフは警官だから、似た境遇とはいえる。

だが、社会的格差がかつてないほど広がったいま、役者や警官や作業員よりも「どん底」生活を強いられている者が外国人労働者(ダッタン人のような)を含め、もっと他にいるだろう。後味が釈然としないゆえんである。

翻訳者の作品解釈が載っていた。要するに、「現代を生きる私たちもそれぞれ形を変えた「どん底」を背負って」おり、「「どん底」と共生することこそが生きることであり、それこそが真実なのだ」と(プログラム)。

今回の舞台も同じラインから、普遍化/一般化した「どん底」のありようを描こうとしたのだろうか。

 プログラムには岸田國士(1890-1954)の「『どん底』の演出」と題する短文も掲載されていた。岸田は1954年の文学座公演で本作の演出を手がけたが、初日の前日に倒れ、翌朝 3月5日に永眠した。岸田はこの文で、パリ留学中の1922年にモスクワ芸術座の『どん底』(スタニスラフスキイのサーチン、チェーホフ夫人クニッペルのナースチャ等)を見たこと、帰国後、小山内薫訳・演出の『どん底』がじめじめして暗く、やりきれないほど「長い」こと等を指摘する。「戯曲「どん底」は、長い北欧の冬からの眼醒めを主題とする希望と歓喜の歌が、この、辛うじて人間である人々の胸の奥でかすかに響いてゐるやうな気がする。コーリキイは、「どん底」の人々の誰よりもスラヴ的「楽天家」なのである」と。

さらに岸田の「『どん底』ノート」(プログラムには未掲載)には登場人物についての短いメモが記され、たとえば、ルカは「最大の悪人、最も有害な存在。人を油断させ、人を嘘で酔はせる。空ろな希望に身を任させる。これが、やさしさの正体」とある(『岸田國士演出 台本「どん底」——神西清訳による』角川書店、1954)。

岸田が強調する作品の「明るさ」は、同じ文学座の五戸真理枝演出にも引き継がれていた。が、ルカには、岸田のいう悪人性は見られず、きわめてポジティヴな造形だった。巡礼者ルカの悪人性、有害性についてはもちろん議論の余地がある。翻訳者によれば、ロシアでもルカの人物像に関して論争があるらしい。だが、少なくともルカの言葉に踊らされた俳優が自死した結末からすれば、配布された「登場人物紹介」(上掲)の、「あったかい」「とても優しい」「おじいちゃん」との一面的な要約には、違和感がある。

ルカの悪人性を押さえたうえで、本作の明るさを読み取った岸田國士はいったいどんな舞台を創ったのか。観てみたかった。

ところで『岸田國士演出 台本「どん底」』に、演出助手を務めた戌井市郎の「稽古日誌」が載っている。興味深い記述が少なくないが、とりわけ次の指摘には強い共感を覚えた。

発声につき、所謂、音汚く怒鳴ることを極力避けるよう注意あり。

画家ブブノワ女史*1、来座。総じて日本の舞台俳優は怒鳴りすぎることを指摘。

 岸田の「注意」と、当時の在日ロシア人の「指摘」は奇しくも重なっている。こうした六十数年前の注意や指摘は、現在の日本の演劇界にもいまだに有効だといわざるをえない(今回の舞台はさほどでもなかったが)。

*1:ワルワーラ・ブブノワ(1886-1983)はロシア人美術家で、妹は、諏訪根自子や岩本真理などを育てたヴァイオリン教師の小野アンナ。オノ・ヨーコはアンナの義姪にあたる。

11月のフィールドワーク予定 2019【キャスト一部変更】【追記】【新日フィル演奏の正確な曲名】

今月は新国立劇場 三部門の上演作に注目している。オペラではドニゼッティの《ドン・パスクワーレ》が新制作され、劇場初演となる。演劇部門の『あの出来事』(2013年初演)は、極右青年がノルウェーで起こした銃乱射テロ事件を扱った作品で、登場人物は2人だが30人の合唱団とピアニストがコロスとして参加するという。どんな舞台になるのだろう。バレエ(ダンス)では2017年3月に初演された中村恩恵振付の『ベートーヴェンソナタ』が再演される。生誕200周年を来年迎える作曲家の生涯をモチーフにした秀作で、再演を心待ちにしていた。BCJの定演は《ブランデンブルク協奏曲》の全曲版。つまり声楽(合唱)なしだ。第5番は佐藤俊介(35歳)率いるオランダ・バッハ協会の演奏で聴いたばかり。鈴木優人(38歳)がBCJでどんな音楽作りをするのか。これも楽しみだ。

8日(金)19:15 新日本フィル #612 定演 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉グリーグ:序曲「秋に」 op. 11/ニールセン:ヴァイオリン協奏曲 op. 33*/チャイコフスキーバレエ音楽『眠れる森の美女』より抜粋

プログラムは不正確な曲名表記があり、スタッフの方に確認した。当日演奏された正しい曲名は以下の通り(T氏には丁寧に対応していただいた)。

序奏/プロローグより「パ・ド・シス」と「コーダ」/第2幕より「パノラマ」/第1幕より「ワルツ」/第3幕より「パ・ド・カトル」(金の精、銀の精など)と「パ・ド・キャラクテール」(長靴をはいた猫と白い猫)/第2幕より「パ・ダクション」の「コーダ」/第1幕の「フィナーレ」/第3幕の「パ・ド・ドゥ」より「ヴァリアシオン1」(デジレ王子)/第1幕の「パ・ダクション」(ローズ・アダージョ

/指揮:ニコライ・シェプス=ズナイダー/ヴァイオリン:ヨハン・ダールネ* @すみだトリフォニーホール

9日(土)14:00 新国立劇場オペラ《ドン・パスクワーレ》全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:ガエターノ・ドニゼッティ指揮:コッラード・ロヴァーリス/演出:ステファノ・ヴィツィオーリ/美術:スザンナ・ロッシ・ヨスト/衣裳:ロベルタ・グイディ・ディ・バーニョ/照明:フランコ・マッリ/演出助手:ロレンツォ・ネンチーニ[キャスト]ドン・パスクワーレ:ロベルト・スカンディウッツィ/マラテスタ:ビアジオ・ピッツーティ/エルネスト:マキシム・ミロノフ/ノリーナ:【ダニエル・ドゥ・ニースは「本人の都合」でキャンセル】ハスミック・トロシャン/公証人:千葉裕一/合唱指揮:三澤洋史/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

【14日(木)木下 晋 展――いのちを描く@ギャラリー枝香庵7F・8F】

14日(木)19:00 新国立劇場 演劇『あの出来事』The Events [日本初演]〈日本語上演/日本語及び英語字幕付 〉作:デイヴィッド・グレッグ(Greig グレイグ)/演出:瀬戸山美咲/翻訳:谷岡健彦/出演:南 果歩 小久保寿人/「あの出来事」合唱団(五十音順):秋園美緒 あくはらりょうこ 石川佳代 カーレット・ルイス 笠原公一 かとうしんご 鹿沼玲奈 上村正子 木越 凌 岸本裕子 小口舞馨 小島義貴 櫻井太郎 桜庭由希 Sunny 白神晴代 菅原さおり 杉山奈穂子 鈴木里衣菜 武田知久 谷川美枝 富塚研二 中村湊人 松浦佳子 南舘優雄斗 柳内佑介 山口ルツコ 山本雅也 吉岡あきこ 吉野良祐/ピアノ:斎藤美香 @新国立小劇場

24日(日)15:00 BCJ #135 定演 J. S. バッハ《ブランデンブルク協奏曲》全曲 BWV 1046〜1051指揮・チェンバロ:鈴木 優人/トランペット:ギ・フェルベ/フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子/リコーダー:アンドレアス・ベーレン/ホルン:福川伸陽/オーボエ:三宮正満/ヴァイオリン:若松夏美、高田あずみ、山口幸恵/管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

28日(木)19:00 新国立劇場オペラ《椿姫》全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ指揮:イヴァン・レプシッチ/演出・衣裳:ヴァンサン・ブサール/美術:ヴァンサン・ルメール/照明:グイド・レヴィ[キャスト]ヴィオレッタ:ミルト・パパタナシュ/アルフレードイヴァン・アヨン・リヴァス【「家族の事情」でキャンセル】ドミニク・チェネス/ルモン:須藤慎吾/フローラ:小林由佳/ガストン子爵:小原啓楼/ドゥフォール男爵:成田博之/ドビニー侯爵:北川辰彦/医師グランヴィル:久保田真澄/アンニーナ:増田弥生/ジュゼッペ:中川誠宏/使者:佐藤勝司/フローラの召使:上野裕之/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:新国立劇場合唱団 @新国立劇場オペラハウス

29日(金)18:00 北とぴあ国際音楽祭2019 セミ・ステージ形式 オペラ《リナルド》1711年版・全3幕〈イタリア語上演・日本語字幕付〉作曲:ヘンデル/指揮・ヴァイオリン:寺神戸 亮/演出:佐藤美晴/管弦楽:レ・ボレアード(オリジナル楽器使用)[キャスト]リナルド:クリント・ファン・デア・リンデ/アルミレーナ:フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ/アルミーダ:湯川亜也子/ゴッフレード:布施奈緒子/エウスターツィオ:中嶋俊晴/アルガンテ:フルヴィオベッティーニ/魔法使い:ヨナタン・ド・クースター/シレーネ1:澤江衣里/シレーネ2:望月万里亜 @北とぴあ さくらホール

30日(土)14:00 中村恩恵×新国立劇場バレエ団『ベートーヴェンソナタ振付:中村恩恵/音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/照明:足立 恒/美術:瀬山葉子/衣裳:山田いずみ/音楽監修・編曲:野澤美香/音響:内田 誠[キャスト]ベートーヴェン:福岡雄大ジュリエッタ:米沢 唯/アントニエ:小野絢子/カール:井澤 駿/ヨハンナ:本島美和/ルートヴィヒ:首藤康之//池田理沙子、井澤 諒、貝川鐵夫、 木村優里、寺田亜沙子、 福田圭吾、渡邊峻郁、奥田花純 、 木下嘉人、五月女 遥/宇賀大将、 小野寺 雄、清水裕三郎、 髙橋一輝、玉井るい、中田実里、 福田紘也、 益田裕子、関 晶帆、 中島瑞生、 渡邊拓朗 @新国立中劇場